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農業研修制度を利用して僕は農家になった

兵庫県宝塚市出身の糸田川さん。2010年に農業研修生2期生として移住し、トマト農家として独立就農されました。
伝統芸能・多里かしらうちの保存会では副団長を務めるなど地域活動にも熱心。

 

(兵庫県から移住)糸田川 啓 さん

 

多里でトマト農家になると決めた

—日南町でトマト農家になられた経緯を教えてください。
僕は小さい頃から農業がしたいと思っていました。大学時代に田植え体験で日南町を訪れたこともあり、
当初は農業=米というイメージがあったんです。
しかし、Iターンの先輩から「お金になるものを作ったほうがいい、
みんなが作っているものを作らないと助けも得づらい」と助言をもらって。
さらに、移住者は最初から広い土地を確保するのが難しい。
ネギやブロッコリーのように面積のいる作物は作れないし、加えて米は初期投資も大きいので、
僕はトマト以外ありえないと思いました。

—現在のお住まいはどのように?
農業研修生2期生として移住した当初は、役場指定の一軒家を同期の仲間と借りて半年ほど住んでいました。
その後小学校を改修利用して作られた定住促進住宅への入居を経て、
2年目からは地元の人にお願いして就農地域に家を探してもらいました。
多里に決めた理由は、やはり大学時代に来たからというのが大きかったです。

—多里は移住者が多いイメージがあります。
確かに多いですが、なかなか定着せず入れ替わりが激しいのが現状です。
古くから鉱山文化があり、また街道で往来もあったので比較的開けた町で、
他の地域と比べるととっつきやすい部分はあると思います。

—どうしても最初は地元の人も拒否反応というか心を開かなかったり?
ありますあります。そのあたりが住んでみて初めてわかるところですよね。
どうしても地元の同世代の人と求められることに差があったり。
おかしいことはおかしいとはっきり言うようにしてますけどね(笑)。

—それは言い換えれば、移住者に対する期待が大きいとも言えますよね。
それはあると思います。僕たちは農業がしたいという強い思いで来ているぶん、パワーがありますよね。
逆に1度よそへ出て帰ってきた人に対しても、もっと期待してあげてほしいと思ったりもします。

—思い入れのぶんパワーがある。やっぱり農業は大変ですもんね。
大変ですけど、楽しいと思いますよ。あとは仕事だと割り切れるかどうかですね。
忙しい時期は朝ももちろん早いですけど、これは自分で選んだ仕事なんだから、と。
8月の末頃には顔が疲れ切っていて「アンタどうしたの」なんて声をかけられたりもしますけどね(笑)。

 

 

今だからわかる農業研修制度のこと

—農業研修で学べたことについて教えてください。
農業研修では、技術面より色々な農家さんを回ってたくさんの人と知り合えたことが良かったです。
農業は「見て盗む」という部分が大きいので、そんな時頼れる人がいるのはとても大切。
1カ所の農家さんで1〜2週間研修します。短期間ですが、逆にそれがよかった。
同じ時期でも違うやり方や、地域による生育の違いを知ることができました。

—反対に、学べなかったと感じることはありますか?
研修だけでは学べなかったこともたくさんありますが、
就農してから得た部分のほうが大きいので正直たいしたことはありません。
でも、冬場の時間をもっと有効活用すればよかったとは思います。
座学や就農審査に向けての書類作りをしていましたが、
その間に大型特殊免許などを取得しておきたかったと感じています。
農業機械も大型化しているし、自分たちで農道を直したりするのにも建設用機械の免許が要りますしね。
今後の農家には必須だと感じています。

 

 

 

独立就農時には自己資金も必要

—独立就農時の資金について聞かせてください。
雪の時期でもほうれん草などを作れるよう強いハウスを作ったので、
独立就農時には運転資金も合わせて1500万円ほどかかりました。
普通のハウスならもう少し抑えられますが、それでも1000万円にはなると思います。
総額の2/3は助成金で賄えるので、500万円ほど自己資金を投入した形です。

—農業で生計を立てることや、「半農半X」についてはどうでしょう?
5年目にしてやっと農業だけで収支が合うようになりました。
加えて農地利用最適化推進委員の仕事もあるので、十分生活できますね。
忙しくない冬場限定でデマンドバスの運転手を月に1・2回ほどやっていますが、
収入のためというよりはご近所付き合いの範疇です。
「半農半X」と言っても難しく考える必要はありませんね。
昔の人も冬場は出稼ぎに出ていたりしたんだし、そういうものかなと。
今日は人に頼まれて雪からキャベツを掘り出していました。この時期のキャベツはすごくいい味がしますよ。
ただ、地元でも農業だけで暮らせるという人は多くないと思います。
県職員の方からも「よくここまで来たね」と言ってもらいました。

—自然災害などについての心配はありますか?
台風とか怖いですよ。飛ばされたらお手上げなので、台風が来たら夜は寝られないです。
いよいよの時はビニールを切ってハウスを守る心づもりをしています。
先輩方からは台風や雪で全部潰れた、なんていう痛い話をだいぶ聞きましたね。
県が出している事例を見たりもして。
ですが、これさえしていれば大丈夫、というのは全部教えてもらいました。

地元の人にもっと地元の野菜を

今後は、作った野菜を外に売るというばかりではなくて、
まずは地元の人に地元のものを食べてもらいたいという想いがあります。
道の駅ができて地元の方が気軽に作物を買えるようになったのはとても嬉しいですね。
もちろん地域外の人にも食べてもらいたいですが、
地元の中で作物をやりとりできる輪をもっと広げていきたいです。
高齢で家庭菜園ができなくなった人なども多いので、
求められていることをお金に換えていけたらいいんじゃないかなと。
手渡しでの販売には手数料や交通費もないので、単純に地元で売るメリットというのもありますしね。

農業研修制度を検討される方へ

—研修制度を利用される方に伝えたいことはありますか?
人生そんなに長くないので(笑)、夢ばかり追ってはいられませんよとは言いたいですね。
僕は以前から日南町を知っていたけど、来てみて初めてわかったことも多かったです。
農業は楽しいですが厳しくもあり、夢だけでやっていけるというものではありません。

—農家になってよかったと思いますか?また、将来のことについて想うことなどありますか?
良かったと思いますよ。自分で作った野菜を食べた時などはその美味しさに感動してしまいます。
生で食べてみて「このおいしさはなんだ!?」と。幸せですよ。
ですが、日南町での農業にはまだまだ問題も山積みです。
未来のために自分がやらなければどうするんだという想いがありますね。
同世代も増えてほしいので、いろんな回り道をしてからでも農業にたどり着いてくれる仲間がいれば嬉しいです。